このところ、急に話題の中心となってしまった生き物といえば…
タコでありますっ!
24年10月30日、タコの価格が高騰してマグロを抜いたというニュースがありました。
タコで思い出すのが、24年9月30日米国カリフォルニア州でのタコ養殖禁止条例可決のニュースです。
禁止理由の一つに高い認知能力をもつタコにとって養殖は虐待ではないかという疑義が挙げられていました。
確かにタコはビンの蓋を開けられるなど、他の魚類よりも賢いらしい…というのは知っていました。
ただそれだけで法律を改正するまで至るのだろうかという疑問が残ります。
本記事ではタコ保護で先を行く英国で提出された報告書を主に取り上げ、タコが知的生物である事が本当に証明されているのかを考えていきます。
タコの権利保護で先を行く英国
多くの方は忘れていると思いますが、2021年に英国政府はタコを知的存在として認める法改正を既に行っていました。
その結果、タコは犬や猫、家畜などの動物と同様動物福祉法の元で保護されるようになっていたのです。
この法改正の際、貴族院に提出された報告書には、なぜタコが知的存在と言えるのか詳細に記載してありました。
正確にいうと、タコ、イカ、エビ、カニ等の無脊椎動物が知的存在だと書いてありました。
以下では、この報告書の内容の一部をご紹介しますが…
結論から言うと、根拠に乏しく、タコに知性があるのかよくわからないという感想を私は持ちました。
英国でタコ保護の根拠となった報告書
報告書は108ページあり、内容のほとんどは他の論文の引用です。
書き方も独特で、著者が独自に設定した”知的生物かどうか”の判断基準に対して、この論文では証明されている、あの論文で証明されているという論調でした。
そのため説得力に欠るという印象だったのですが、タコ・イカ・カニ・エビに対して面白い実験もいくつかありました。
その中の2つの実験をご紹介します。
1.タコが痛みを感じているという根拠
1つ目はタコが痛みを感じるです。実験内容は以下の通りです。
水槽の中に2つの部屋を作り4つのグループに分けたタコを入れます。
特定の部屋に入った時に、グループ毎に以下の注射をタコに打ちました。
1番目のグループ:生理食塩水のみ
2番目のグループ:酢酸
3番目のグループ:酢酸を注射し、その後リドカイン(麻酔薬)を注射
4 番目のグループ :は生理食塩水を注射し、その後リドカインを注射
タコにとって酢酸を注射される事は苦痛だそうで、グループ3では後で麻酔を打っています。
その結果、タコは酢酸を打たれた部屋を避け、麻酔薬を注射された部屋を好んだそうです。
甲殻類でも同様の実験を行い、同様の結果が出たそうです。
そしてこの学習能力と、怪我した時に麻酔を求めるという点が、タコやカニが知的生物であり、痛みを感じている根拠の一つとされています。個人的には納得しづらいのですが…
またそれゆえ、タコやカニを◯すときは手足を切らず、電気ショックで行うよう提案もされています。
2.コウイカに自制心があるという根拠
2つ目はコウイカの自制心についてです。
報告書の中には「コウイカ」が何回も登場しますが、おそらく半年前のこの研究報告があったためと思われます。
報告内容は、コウイカが、より良い報酬である生きたエビと引き換えに、与えられたおやつである調理済みエビを食べるのに最大2分間抵抗するというものです。
実験室の中で訓練されたコウイカを使った実験結果ですが、すごい発見だと思います。
自制心の根拠のポイントは、コウイカの寿命が1〜2年であるということだと言っていました。
この寿命を持つコウイカの体感時間の2分間は、犬で考えると10分程度、人間で考えると80分程度と考える事ができる…らしく、それゆえ自制心があるという根拠の一つになりうるという事でした。
個人的には、この体感時間論には根拠が薄いのではないか思ったのですが、皆さんはどう思われたでしょうか。
擁護するとしたら…脳の構造が脊椎動物とは全く違う
とはいえ、タコが知的生物であるかどうか、判断するのが難しいのはご尤もです。
なにせ犬猫とは違い、タコは無脊椎動物。
無脊椎動物は、太古の生命発生から早いタイミングで脊椎動物から分岐して、独自の進化を行って来た生命群です。
脳の構造も独特で、脳のシワが無いのです。
進化に応じて脳にシワができる事を回状化と言い、脊椎動物では知能の高さを推し量る一つの指標となっているのですが…
ちなみに脳の形はこちらをご覧ください。脳より左右の視床の方が大きい特徴的な脳の形をしています。
そのため、解剖学的にタコの知性を推し量るのも、現時点では難しいのです。
ちなみに、沖縄科学技術大学大学院ではタコの脳に電極を埋め込み、脳波を測る実験も行われているようです。タコの知性の解明につながるといいのですが。
結論、まだ根拠が薄い
ここまで色々と調べて来て、結局のところタコが知的生物であるという根拠は薄いと感じました。
これからもしかすると、革新的な研究結果等が出るのかもしれませんので、それに期待したいと思います。
ちなみにタコ・イカは頭が良いのは納得したのですが、カニ・エビについてはイマイチわからなかった…
おわりに
もしタコが知的生物だったとしたら、たこ焼きって相当グロい事してるよなぁ等と考えてしまいます。
最後までご覧頂きありがとうございました。